「退院後は、どこでどれくらいリハビリをすればいいですか?」
「家では、どんな訓練をしたらいいのでしょうか?」
「病院を離れたら、また動けなくなりませんか?」
「家族は、どこまで手伝えばいいですか?」
病院ではリハビリの時間が決まっており、専門職が近くにいます。
しかし、自宅へ帰ると、本人と家族で生活を組み立てなければなりません。
そのため、ご家族が「毎日訓練させなければ」「自分が全部手伝わなければ」と責任を背負ってしまうことがあります。
結論からお伝えすると、退院後のリハビリを家族だけで背負う必要はありません。
退院後の生活に不安がある場合は、早めにリハビリ専門職へつなぎ、
・自宅の中で困っていること
・これからできるようになりたいこと
・本人が自然に続けられる活動
・家族が無理なく手伝える範囲
を一緒に整理することが大切です。
この記事では、理学療法士として退院支援や生活期のリハビリに関わってきた経験から、訪問リハビリ、デイケア、自主練習の選び方を解説します。
退院後のリハビリは「訓練の回数」だけで決めません
退院後のリハビリというと、筋力トレーニングや歩行練習を毎日続けることを想像する方が多いかもしれません。
もちろん、必要に応じて専門的な訓練を行うことは大切です。
しかし、自宅でのリハビリは、決められた運動より、生活内で実際に体を動かすことが重要なことが多いです。
私が退院後の生活を見るときは、身体機能だけでなく、次のようなことを確認していました。
・どのような環境で生活しているか
・一日の活動量はどれくらいか
・何を自分で行っているか
・何を家族に手伝ってもらっているか
・本人は何が好きで、何が嫌いか
・以前はどのような趣味があったか
・現在も続けていることはあるか
・誰かに言われなくても行っていることは何か
体操を10回続けることは苦手でも、庭の手入れなら自分から行う方がいます。
歩行練習には乗り気でなくても、新聞を取りに行くことや台所へ立つことは続けられる方もいます。
本人が自然に行っている生活動作は、退院後の大切な活動になります。
「何を訓練させるか」だけでなく、「どのような生活なら自然に体を動かせるか」を考えることが、退院後のリハビリでは重要です。
退院直後に不安があるなら早めに専門職へ相談しましょう

退院後は、病院と自宅の環境の違いによって、本人が安全に動ける範囲が狭くなることがあります。
病院では歩けていても、自宅では、
・廊下が狭い
・手すりがない
・ベッドや椅子の高さが違う
・トイレまでの距離が長い
・家族が心配して先回りしてしまう
・一人で動くことに本人が不安を感じる
といった問題が起こります。
その結果、動く機会が少なくなり、家の中で過ごす時間が長くなることがあります。
特に注意したいのは、本人も家族も必要性を感じている退院直後に、相談のタイミングを逃してしまうことです。
「もう少し様子を見よう」としているうちに、本人が動かない生活に慣れ、外出もしなくなってしまう場合があります。
厚生労働省の資料でも、退院後から訪問・通所リハビリテーションの利用開始までの期間が短い人ほど、日常生活動作の改善が大きい傾向が示されています。
ただし、必要なサービスや開始時期は、病状や生活状況によって異なります。
退院後の生活に不安がある場合は、退院してから考え始めるのではなく、入院中から病院のリハビリスタッフ、退院支援担当者、ケアマネジャーへ相談しておくことをおすすめします。
訪問リハビリが向いている人
訪問リハビリは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが自宅を訪問し、実際の生活環境に合わせて支援するサービスです。
次のような方は、訪問リハビリを検討する価値があります。
・退院直後で自宅生活に不安がある
・家の中の移動やトイレ、入浴などに課題がある
・家を出る提案をしても、なかなか外出できない
・自宅の環境に合わせた動作練習が必要
・家族が介助方法に迷っている
・同じ環境で動作を反復する必要がある
訪問リハビリの強みは、「実際に困っている場所」で状況を確認できることです。
例えば、病院の訓練室では立ち上がれても、自宅の低い椅子からは立てないことがあります。
病院では歩けても、家具の配置や段差の影響で、自宅では不安を感じることもあります。
訪問リハビリでは、その人が使っているベッド、椅子、トイレ、玄関などを確認しながら、動作や環境、家族の介助方法を調整できます。
「自宅生活そのものを安定させたい」という場合に向いているサービスです。
デイケアが向いている人
デイケアは通所リハビリテーションとも呼ばれ、病院、診療所、介護老人保健施設などへ通い、リハビリや必要な支援を受ける介護保険サービスです。
次のような方には、デイケアが向いています。
・自宅内での生活は比較的安定している
・さらに活動範囲を広げたい
・外出する機会をつくりたい
・獲得したい具体的な動作がある
・専門職から目的に沿った支援を受けたい
・自宅だけでなく、より活動的に過ごしたい
・他者との交流も生活に取り入れたい
デイケアのメリットは、自宅から外へ出ること自体が活動になる点です。
着替える、時間に合わせて準備する、送迎車へ乗る、施設内を移動する、人と話す。
この一連の行動も、生活を整える機会になります。
ただし、デイケアを利用すれば自動的に歩けるようになるわけではありません。
「近所へ買い物に行きたい」「一人でトイレへ行きたい」など、本人や家族が困っていること、目指したい生活を専門職と共有することが大切です。
自主練習が向いている人
自主練習は、専門職から教えてもらった運動や生活上の取り組みを、本人や家族が自宅で続ける方法です。
次のような場合には、自主練習を取り入れやすいでしょう。
・本人が自分で習慣化できる
・家族が無理のない範囲で協力できる
・運動方法を理解できる家族がいる
・強い負荷や頻繁な外出を本人が望んでいない
・訪問リハビリやデイサービスと組み合わせられる
自主練習には、全員に共通する正しいメニューがあるわけではありません。
身体の状態、病気、生活環境、本人の目標によって、適した運動や負荷は異なります。
痛みや息苦しさ、強い疲労、体調の変化がある場合は、自己判断で続けず、医師やリハビリ専門職へ相談してください。
また、家族が毎日付き添い、厳しく運動させる必要もありません。
家族が訓練の先生になってしまうと、本人との関係が悪くなったり、家族が疲れ切ったりすることがあります。
専門的な判断は専門職へ任せ、家族は「無理なく続けられる環境を整える」という立場でも十分です。
訪問リハビリ・デイケア・自主練習は組み合わせてもよい
退院後のリハビリは、どれか一つだけを選ばなければならないわけではありません。
例えば、
・訪問リハビリで自宅内の動作を安定させる
・デイケアやデイサービスで外出機会をつくる
・自宅では無理のない自主練習を続ける
という組み合わせも考えられます。
大切なのは、サービスの名称から選ぶことではありません。
まずは、
1.今、生活のどこで困っているか
2.本人は何ができるようになりたいか
3.家族は何に不安を感じているか
4.本人が自然に続けられる活動は何か
を整理します。
そのうえで、ケアマネジャーやリハビリ専門職と相談し、必要な支援を組み合わせていきましょう。
家族は「全部手伝う」のではなく困りごとを共有してください
退院後、ご家族は「転ばせてはいけない」「動けなくさせてはいけない」と考え、本人の動作をすべて手伝ってしまうことがあります。
しかし、手伝いすぎると、本人が自分で動く機会まで減ってしまいます。
反対に、無理に一人で行わせれば、転倒や体調悪化につながる可能性もあります。
家族だけで、どこまで手伝うべきか判断するのは簡単ではありません。
私が現場で大切にしていたのは、家族と困りごとを細かく共有することでした。
・どの場面が怖いのか
・どの介助が大変なのか
・本人は何なら自分でできるのか
・朝と夜で動きに違いがあるか
・家族が無理なく続けられる方法か
こうした情報があると、専門職も実際の生活に合った提案をしやすくなります。
活動について理解のある専門職とつながり、本人と家族の両方が無理なく続けられる方法を一緒に考えることが大切です。
よくある質問
- 退院後は毎日リハビリをしないと動けなくなりますか?
-
毎日決められた訓練をしなければ、必ず動けなくなるわけではありません。
起きる、着替える、トイレへ行く、食事をするなど、日常生活の中にも体を動かす機会があります。
ただし、活動量が大きく減った場合や状態に変化がある場合は、医師やリハビリ専門職へ相談しましょう。
- 訪問リハビリとデイケアのどちらを選べばいいですか?
-
自宅内の動作や環境に課題がある場合は、訪問リハビリが向いています。
自宅生活が比較的安定し、外出や活動範囲の拡大を目指す場合は、デイケアを検討できます。
本人の状態や地域のサービス提供状況によっても異なるため、ケアマネジャーへ相談してください。
- デイサービスでもリハビリは受けられますか?
-
機能訓練を行っているデイサービスもあります。
ただし、専門職の配置や支援内容は事業所によって異なります。
利用前に、誰が、どのような目的で、どれくらい支援するのかを確認しましょう。
- 家族が自主練習を手伝った方がいいですか?
-
本人と家族の双方に無理がなければ、一緒に行う方法もあります。
ただし、家族が訓練を管理する役割まで背負う必要はありません。
方法や介助量に迷う場合は、専門職に実際の動きを確認してもらいましょう。
- 退院後に急に動けなくなった場合はどうすればいいですか?
-
急な筋力低下とは限らず、病気やけが、薬の影響、脱水などが隠れていることもあります。
突然立てない、片側に力が入らない、意識や会話がおかしい、強い痛みや息苦しさがある場合は、リハビリより先に医療機関へ相談してください。
まとめ
退院後のリハビリで大切なのは、決められた訓練を毎日続けることだけではありません。
まず確認したいのは、
・自宅のどこで困っているか
・何を自分で行えているか
・家族は何に不安を感じているか
・本人が自然に続けられる活動は何か
・これからどのような生活を送りたいか
ということです。
自宅での生活そのものに不安があれば訪問リハビリ、生活をさらに広げたいならデイケア、本人や家族が無理なく習慣化できるなら自主練習が選択肢になります。
必要に応じて、複数のサービスを組み合わせても構いません。
退院後の回復や今後の生活に不安があるときは、家族だけで抱え込まず、早めに専門職へつなげましょう。
体力や生活を回復していく過程、支援が必要な期間、適した介助方法については、専門職だからこそ判断できる部分があります。
餅は餅屋です。
家族がすべての責任を背負うのではなく、専門職と困りごとを共有しながら、本人らしい生活を一緒に整えていきましょう。

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