「特養に入ると歩けなくなるよ。」
そんな話を聞いて、不安になった方もいるのではないでしょうか。
私も20年以上介護の現場で働く中で、ご家族から
「リハビリはありますか?」
「歩けなくなってしまいますか?」
と何度も相談を受けてきました。
確かに、入所後に車いすで過ごす時間が増える方もいます。
しかし、それは「特養に入ったから歩けなくなった」と一言で言えるものではありません。
この記事では、現場で見てきた実情と、ご家族にお伝えしてきたことをお話しします。
特養に入ると歩けなくなると言われる理由

活動量が変わる
特養では、自宅と生活環境が変わります。
家の中を自由に歩いていた方でも、生活動線や日課が変わることで、以前より歩く機会が少なくなることがあります。
安全を優先する場面がある
介護現場では、「歩けるか」だけではなく、「安全に歩けるか」を大切にしています。
転倒による骨折は、その後の生活に大きな影響を与えることがあります。
そのため、職員は転倒リスクを考えながら介助を行います。
結果として、中には車いすを利用する時間が増える方もいます。
加齢や病気の影響も大きい
歩行能力は、施設に入ったことだけが原因で低下するわけではありません。
加齢や病気の進行によって身体機能が変化することも多くあります。
施設だけが原因と考えるのは正確ではありません。
よくある質問(FAQ)
特養では毎日リハビリを受けられますか?
特養は、病院や介護老人保健施設(老健)のように積極的なリハビリを行う施設ではありません。
日常生活の中で体を動かしたり、できることを続けられるよう支援したりすることが中心です。
そのため、「毎日リハビリを受けて機能を回復する」という目的であれば、老健など他の施設が適しています。
特養に入ると必ず車いすになりますか?
いいえ、必ず車いすになるわけではありません。
ただ、特養に入所される方は要介護3以上の方が中心です。
もともと歩行に介助が必要だったり、車いすを利用していたりする方も多くいらっしゃいます。
また、入所後は転倒予防など安全面を優先するため、状況によって車いすを利用する時間が増えることがあります。
「特養に入ったから車いすになった」というよりも、もともとの身体状況や病気の進行、安全への配慮など、複数の要因が重なった結果と考えるのが実際に近いでしょう。
歩けなくなるのは特養が原因ですか?
特養だけが原因とは言えません。
身体機能の低下には、加齢や病気の進行、生活環境の変化など、さまざまな要因があります。
特養では安全を優先した支援を行うため、その結果として歩く機会が減る場合もありますが、それだけが理由ではありません。
特養と老健ではリハビリはどう違いますか?
老健は一般的には在宅復帰を目指す施設で、リハビリ専門職による訓練を受けられることが特徴です。
一方、特養は生活の場として介護を受ける施設であり、日常生活を支えながら現在の身体機能を維持することを目的としています。
特養への入所を迷っています。何を基準に考えればよいですか?
「歩けるかどうか」だけで判断する必要はありません。
ご本人の身体状況はもちろん、介護するご家族の体力や精神的な負担、今後も在宅生活を続けられるかどうかを含めて考えることが大切です。
私がご家族によくお伝えしていたこと
私は、ご家族へこんなお話をしていました。
「身体の機能が少しずつ変化していくことは悲しいことです。
でも、介護するご家族が心も体も限界になってしまうことも、同じくらい大きな問題です。
施設への入所は、歩くことをあきらめるためではありません。
本人とご家族の両方が安心して生活を続けるための選択肢の一つなんです。」
介護は、「歩けるかどうか」だけではありません。
安心して食事ができること。
夜ゆっくり眠れること。
清潔に過ごせること。
そして、ご家族が笑顔で面会に来られること。
そうした暮らし全体を支えることも、とても大切です。
まとめ
「特養に入ると歩けなくなるのではないか。」
そう不安になる気持ちは、とても自然なことです。
しかし、介護には「歩くこと」だけでは測れない大切なものがあります。
私は20年以上介護の現場で、ご本人とご家族の両方を見てきました。
だからこそお伝えしたいのは、「どちらかが我慢し続ける介護」ではなく、「本人も家族も安心して暮らせる選択」を一緒に考えてほしいということです。
施設への入所は、決して「かわいそう」だから選ぶものでも、「楽をするため」だけのものでもありません。
これからの暮らしを、本人と家族の双方にとってより安心できるものにするための、一つの大切な選択肢なのです。

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