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病院では歩けたのに家では歩けない…退院後に家族が焦らなくていい理由【理学療法士が解説】

「病院では歩けていたのに、家に帰ったらほとんど歩けなくなってしまった…。」

退院後、このような相談をご家族から受けることは少なくありません。

「このまま歩けなくなるのではないか」「リハビリが足りなかったのではないか」と不安になる気持ちは、とてもよく分かります。

私も理学療法士として急性期・回復期・生活期の現場で、多くの退院支援に携わってきました。その中で感じるのは、退院した日が回復のゴールではないということです。

病院で歩けていた方でも、自宅では思うように歩けないことは珍しくありません。だからといって、すぐに悪くなったわけではありません。

この記事では、退院後に親が歩けなくなったときに家族が焦らなくていい理由と、最初の1週間で大切にしたいことを、現場経験をもとにお伝えします。

目次

病院では歩けたのに家では歩けないのは珍しいことではありません

退院後に「病院では歩けていたのに、家では歩けない」と感じる方は少なくありません。

その理由は、病院と自宅では環境が大きく異なるためです。

病院には手すりがあり、歩きやすい廊下があります。また、看護師やリハビリスタッフが近くにいる安心感もあります。

一方、自宅では家具の配置や段差、カーペットなど、歩きにくい環境が多くあります。

さらに、退院してホッとしたことで疲れが出たり、「転んだらどうしよう」という不安から思うように体が動かなくなったりすることもあります。

そのため、退院後に歩きにくくなること自体は決して珍しいことではありません。

家族が最初の1週間で大切にしたいこと

歩くことより安全を優先する

退院すると、「歩かせないと筋力が落ちる」と心配になる方もいます。

しかし、退院直後に最も避けたいのは転倒です。

無理に歩く距離を増やすよりも、安全に移動できる環境を整えることを優先しましょう。

夜の不安を減らす

夜は暗く、疲れもたまっているため転倒しやすくなります。

廊下やトイレまでの動線を明るくしたり、必要に応じてポータブルトイレを利用したりすることで、安全性は大きく向上します。

家族が安心して休める環境をつくることも大切です。

トイレまで無理をさせない

トイレの失敗を防ごうとして無理に歩き、転倒してしまうケースもあります。

「失敗しないこと」ではなく、「安全に排泄できること」を目標に考えましょう。

私が現場で家族に伝えていたこと

退院後、不安そうなご家族に私はいつも次のようなお話をしていました。

「病院で歩けていても、自宅で思うように歩けないことはよくあります。」

「病院は病気を治す場所ですが、自宅は生活を取り戻す場所です。」

「退院したからといって、体がすべて回復したわけではありません。」

「帰ってからも体の力は少しずつ伸びていきます。」

焦ってたくさん歩かせる必要はありません。

急激に悪くなることも少なければ、急激によくなることも多くありません。

だからこそ、安心して動ける環境、そして「動いてみよう」と思える生活を整えることが大切なのです。

また、家族が安心できる時間をつくることも忘れてはいけません。

家族が安心できることで、本人にも安心感が伝わります。

本人だけでなく、家族も安心して介護を続けられる環境づくりが、回復への第一歩になります。

生活が整うことで、ゆっくり回復していく

私が担当した方の中には、退院直後は家の中を歩くことも不安定だった方がいました。

しかし、生活リズムが整い、安心して過ごせる環境ができたことで、少しずつ活動量が増えていきました。

最初は短い距離しか歩けませんでしたが、数か月後には家の中を自由に移動できるようになり、約1年かけて入院前に近い生活まで回復しました。

家事を任されることも増え、ご本人は「自分にもまだできることがある」と笑顔で話してくださいました。

退院直後だけを見て、「もう良くならない」と決めつける必要はありません。

生活が安定することで、体の力だけでなく、自信や意欲も少しずつ戻ってくる方を私は何人も見てきました。

一人で抱え込まず、介護保険を活用しましょう

退院後の生活は、家族だけで頑張る必要はありません。

介護保険を利用すれば、

  • ケアマネジャーへの相談
  • 訪問リハビリ
  • デイケア
  • 福祉用具のレンタル
  • 住宅改修

など、生活を支えるさまざまなサービスを利用できます。

家族が安心できる時間をつくることも、介護を続けるうえでとても大切です。

困ったときは、一人で抱え込まず相談してみましょう。

よくある質問(FAQ)

病院では歩けたのに、家で歩けないのは普通ですか?

はい、珍しいことではありません。

病院と自宅では環境が大きく異なります。また、退院後は疲れや安心感から活動量が落ちることもあります。すぐに悪化したと考えるのではなく、まずは安全に生活できる環境を整えることが大切です。

このまま歩けなくなるのでしょうか?

退院は回復のゴールではなく、自宅での生活が始まるスタートです。

生活リズムが整い、適切なリハビリや活動を続けることで、数か月から1年ほどかけて回復する方も少なくありません。

家族は毎日歩く練習をさせたほうがいいですか?

無理がない範囲で歩く機会が多いほど歩く力はついていきます。

自分で歩ける場合は、転倒予防も重要です。

歩く量よりも、安全に生活できる環境づくりや、本人が安心して体を動かせることを大切にしましょう。

夜に転びそうで心配です。どうすればいいですか?

夜間は転倒しやすい時間帯です。

廊下やトイレに照明を設置したり、手すりやポータブルトイレを活用したりすることで、安全性を高められます。必要に応じて福祉用具や介護保険サービスを利用することもおすすめです。

介護保険サービスはいつ相談すればいいですか?

「困ってから」ではなく、「困りそう」と感じた時点で相談するのがおすすめです。

ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談すれば、ご本人やご家族の状況に合わせたサービスを提案してもらえます。早めに相談することで、安心して在宅生活を続けやすくなります。

まとめ

病院では歩けていたのに、家では歩けないという状況は珍しいことではありません。

退院は回復のゴールではなく、自宅での生活を取り戻すスタートです。

焦って歩かせることよりも、安心して生活できる環境を整えることが、結果として回復につながります。

そして、本人だけでなく家族が安心して介護を続けられる環境をつくることも、とても大切です。

一歩ずつ生活を整えながら、その人らしい暮らしを取り戻していきましょう。

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この記事を書いた人

リハビリ専門職として病院・訪問リハビリ・介護保険分野などで20年以上現場に関わってきました。現在は介護施設の運営支援や現場改善にも携わっています。実際の現場では、介護疲れや家族関係、仕事との両立など、多くの悩みや葛藤を見てきました。このサイトでは、“理想論だけでは続かない介護”を前提に、一人で抱え込みすぎず、少しでもラクに続けるための現実的な情報を、現場経験をもとに発信しています。

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