「デイケアに通えば、毎回マンツーマンでリハビリしてもらえると思っていた」
「専門職に身体をほぐしてもらったり、歩く練習をしてもらったりしたい」
「実際には集団体操が多いけれど、本当にリハビリを受けられているの?」
デイケアの利用を考えているご本人やご家族から、このような声を聞くことがあります。ケアマネジャーも、デイケアでは毎回個別リハビリを受けられると考えていることがあります。
私は理学療法士として、病院や訪問リハビリ、介護保険分野で20年以上リハビリに関わってきました。そのなかで感じるのは、ご本人やご家族が考える「リハビリ」と、デイケア側が考える「リハビリ」には、少し違いがあるということです。
この記事では、デイケアで個別リハビリを毎回受けられるのか、内容や頻度はどのように決まるのか、見学時に何を確認すればよいのかを、現場経験をもとに解説します。
結論|デイケアで毎回個別リハビリを受けられるとは限らない

デイケアを利用すれば、必ず毎回マンツーマンの個別リハビリを受けられるとは限りません。
個別リハビリの有無や頻度、時間、内容は、事業所の人員体制や方針、ご本人の状態、リハビリの目標などによって異なります。事業所独自のサービスとして、毎回個別リハビリを行うことを約束しているところもあります。
ただし、デイケアを選ぶときに確認したいのは、「毎回個別リハビリをしてくれるか」だけではありません。
大切なのは、ご本人が自宅で何に困り、何をできるようになりたいのかを確認したうえで、必要なリハビリと一日の過ごし方が組み立てられているかです。
個別リハビリの回数だけでなく、内容を決めるプロセスや、個別リハビリ以外の時間をどのような目的で過ごすのかも確認しましょう。
↓デイサービスとデイケアの違いはこちらで解説しています

なぜ「毎回マンツーマンでリハビリしてもらえる」と思いやすいのか
病院で受けたリハビリの印象が強い
病院では、理学療法士や作業療法士などと一対一になり、決められた時間のなかでリハビリを受けることが一般的です。
そのため、退院後にデイケアを利用するときも、病院と同じように毎回一定時間、専門職から個別に訓練してもらえると考える方が少なくありません。
しかし、デイケアは病院とは人員体制やサービスの仕組み、一日の過ごし方が異なります。病院で行っていたリハビリが、そのまま同じ形で継続されるとは限りません。
リハビリをマッサージやストレッチだと思っている
ご本人やご家族のなかには、リハビリを「専門職に身体を触ってもらう時間」と考えている方もいます。
実際、筋肉の緊張や痛み、関節の動かしにくさがある場合には、身体をほぐしたり、ストレッチを行ったりすることがあります。専門職と一対一で関わることが、ご本人の安心感や運動への意欲につながる場合もあります。
一方で、毎回同じマッサージを受けることが、必ずしも歩行や自宅生活の改善につながるとは限りません。
「マッサージをしてもらったからリハビリを受けた」と考えるのではなく、何を改善するために行っているのかを確認することが大切です。
個別リハビリの内容はどのように決まるのか
個別リハビリでは、ご本人やご家族の希望を聞くだけでなく、専門職が身体の状態や生活上の困りごとを評価したうえで、必要な内容を検討します。
「足が弱った」だけではリハビリ内容を決められない
ご家族から「最近、足が弱ってきたのでリハビリをしてほしい」と相談されたとき、私は次のように質問していました。
「どのようなときに、弱ってきたと感じますか?」
「いつ頃から、そう感じるようになりましたか?」
「以前できていたことで、難しくなったことはありますか?」
一口に「足が弱った」といっても、立ち上がりにくいのか、ふらつくのか、長く歩けないのかによって、考えられる原因と必要な対応は変わります。
ご本人にも「歩くときに何が不安ですか?」と確認します。
ご本人の感覚や実際の動作を確認しながら、次のような原因のヒントを探していきます。
- 病気や麻痺による動かしにくさ
- 筋肉の緊張や身体のこわばり
- 足腰の筋力低下
- バランス能力の低下
- 持久力や全身の体力低下
- 転倒への恐怖心
評価した結果から必要な方法を組み合わせる
原因が違えば、必要なリハビリも異なります。
体力や持久力の低下が中心であれば、自転車などを使った有酸素運動が適しているかもしれません。歩き方や実際の移動に課題があれば、歩行訓練が必要です。
筋力低下には筋力トレーニング、バランス低下には立った状態での練習や方向転換の練習などを検討します。筋肉の緊張やこわばりが動作を妨げている場合には、ストレッチや専門職による直接的な介入が必要なこともあります。
どれか一つを行えばよいとは限りません。ご本人の状態や生活目標に合わせて、複数の方法を組み合わせることもあります。
専門職が直接身体へ触れることだけが個別リハビリの目的ではありません。何に困っているのかを評価し、必要な方法を考え、ご本人が続けられる形に整えることも専門職の大切な役割です。
個別リハビリ以外の時間もリハビリにつながる
デイケアで過ごす数時間のうち、専門職と一対一で関わる時間は一部分です。
そのため、個別リハビリの時間だけでなく、残りの時間をどのように過ごすのかが重要になります。
たとえば、デイケア内を歩いて移動する、椅子から立ち上がる、トイレへ行く、着替える、入浴する、ほかの利用者と活動に参加することも、日常生活に必要な動作です。
これらを安全のためにすべて職員が介助してしまえば、ご本人が自分で身体を動かす機会が減る可能性があります。反対に、ご本人の状態を確認せず、何でも自分でやってもらえばよいわけでもありません。
本人ができること、練習すればできそうなこと、介助が必要なことを整理し、一日の生活のなかに適切な活動を組み込むことが大切です。
厚生労働省も、通所リハビリテーションを、心身機能の維持・回復を図るだけでなく、日常生活の自立を助けるために必要なリハビリテーションを行うサービスとしています。
↓半日デイケアで入浴とリハビリを両立できるかはこちらで解説しています

「毎回個別リハビリをします」だけでは良い事業所か判断できない
毎回個別リハビリを行っていること自体が、悪いわけではありません。
ご本人が専門職と一緒でなければ運動に取り組めない場合や、身体を触ってもらうことで安心して動ける場合には、個別に関わることが意欲を保つために必要なこともあります。
ただし、目的が曖昧なまま、決められた時間をこなすために毎回同じマッサージを続けているだけなら、それが本当にご本人の生活改善につながっているのか確認が必要です。
重要なのは、個別リハビリを行った時間の長さではありません。
- なぜ、そのリハビリを行うのか
- どのような変化を目指しているのか
- 自宅での困りごとにどうつながっているのか
- 定期的に効果を確認しているか
- 状態に応じて内容を見直しているか
これらを説明できる事業所かどうかが、判断材料になります。
デイケア見学時に確認したい3つの質問
1.個別リハビリでは、具体的に何をしますか?
「運動やマッサージを行います」という説明だけでなく、ご本人の状態ではどのような評価やリハビリが考えられるのかを聞いてみましょう。
利用前なので詳しい内容まで決められない場合でも、評価から計画を作る流れを説明してもらえると安心です。
2.個別リハビリの内容や頻度は、どのように決まりますか?
毎回あるか、週に何回あるかだけでなく、次の点を確認します。
- 本人の身体や生活の状態を評価しているか
- 本人や家族の希望を聞いているか
- 自宅での困りごとを計画に反映しているか
- 専門職が必要性を判断しているか
- 定期的に内容を見直しているか
「全員に毎回同じ内容を行っています」という説明を受けた場合は、それぞれの目的や状態に合わせて内容を調整しているかも確認してみてください。
3.個別リハビリ以外の時間は、どのように過ごしますか?
一日の予定だけでなく、それぞれの活動を何のために行うのかも聞いてみましょう。
個別リハビリ以外の時間がほとんど座ったままになっていないか、本人の目標につながる活動や役割があるかを確認します。
↓デイケア全体の選び方や見学ポイントは、こちらの記事で詳しく解説しています。

良いデイケアは、目標と変化をオープンに話し合える
私が良いと感じるのは、リハビリの内容を事業所のなかだけで決めるのではなく、ご本人やご家族、ケアマネジャーなどと共有できるデイケアです。
特に、リハビリ会議を積極的に活用し、次のことを話し合える事業所は、本人の生活を丁寧に見ようとしていると感じます。
- 本人が何をできるようになりたいか
- 家族が何に困っているか
- デイケアでどのような対応をしているか
- 利用後にどのような変化があったか
- 現在の目標やプログラムを続けてよいか
- 今後、内容をどのように見直すか
リハビリ会議の開催方法や参加者は、事業所の体制などによって異なります。そのため、見学時には「家族やケアマネジャーと、目標やリハビリ内容を共有する機会はありますか?」と聞いてみるとよいでしょう。
良いデイケアとは、リハビリを提供して終わる事業所ではありません。ご本人がどのように暮らしたいのかを目的として据え、取り組んだ結果を関係者と一緒に振り返れる事業所だと思います。
希望していたリハビリと違った場合はどうする?
利用を始めたあとに「思っていたリハビリと違う」と感じても、すぐに事業所が悪いと判断する必要はありません。
まずは、ご本人が何を望んでいるのか、自宅でどのようなことに困っているのかを改めて整理しましょう。
そのうえで、専門職や担当者へ次のように確認します。
- 現在のリハビリは、何を目的にしていますか?
- 個別リハビリの内容や頻度は、どのように決めていますか?
- 自宅での困りごとは計画に反映されていますか?
- 本人の希望を取り入れることはできますか?
- 今後、どのように効果を確認しますか?
「毎回マッサージをしてください」と方法だけを求めるより、「自宅のトイレまで安全に歩けるようになりたい」など、生活上の目標を伝えた方が、必要な対応を一緒に考えやすくなります。
話し合っても希望や目的が合わない場合は、ケアマネジャーにも相談し、利用内容や事業所の変更を検討しましょう。
よくある質問
- デイケアでは毎回個別リハビリを受けられますか?
-
すべてのデイケアで、毎回受けられるとは限りません。個別リハビリの有無や頻度、時間は、事業所の体制や方針、ご本人の状態、リハビリの目標などによって異なります。利用前の見学で確認しましょう。
- デイケアでマッサージをお願いできますか?
-
身体の状態や目的によって、専門職が直接身体へ触れたり、ストレッチを行ったりする場合があります。ただし、マッサージの提供を目的としたサービスではないため、希望どおり毎回受けられるとは限りません。まずは、痛みやこわばりによって何に困っているのかを伝えてください。
- 個別リハビリを増やしてほしいと希望してもよいですか?
-
希望を伝えて問題ありません。その際は、回数だけでなく「家の中を安全に歩きたい」「一人でトイレへ行きたい」など、具体的な生活目標も一緒に伝えると、必要性を検討しやすくなります。
- 集団体操だけでは意味がないのでしょうか?
-
本人の状態や目的に合っていれば、集団体操や自主的な運動も、活動量や体力の維持につながります。大切なのは、何となく参加するのではなく、本人の目標と活動内容がつながっていることです。
- リハビリ会議には家族も参加できますか?
-
リハビリ会議の開催の有無や方法、参加者は事業所によって異なります。
家族やケアマネジャーと情報を共有する機会があるか、見学時や利用開始時に確認してみましょう。
まとめ|個別リハビリの回数より、生活上の目的を確認しよう
デイケアを利用しても、すべての事業所で毎回個別リハビリを受けられるとは限りません。
しかし、本当に確認したいのは、個別リハビリの回数だけではありません。
- 本人が自宅で何に困っているか
- 本人は何をできるようになりたいか
- 必要な内容をどのように判断しているか
- 個別リハビリ以外の時間をどう過ごすか
- 目標や結果を関係者と振り返っているか
こうした点まで確認することが大切です。
個別リハビリを毎回行っていることが、良いデイケアの唯一の条件ではありません。
ご本人やご家族の希望を聞き、専門職が状態を評価し、一日の過ごし方まで含めて必要な支援を組み立てているか。そして、取り組んだ結果を一緒に振り返れるかを確認しましょう。
見学時には「個別リハビリはありますか?」だけでなく、「内容や頻度をどのように決めていますか?」「個別リハビリ以外は、どのような目的で過ごしますか?」と聞いてみてください。
↓デイケアとデイサービスのどちらが合うか迷っている方はこちら


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