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認知症の親が「財布を盗まれた」と言う…否定しない対応を現場経験から解説

「財布を盗んだでしょう?」

認知症の親から突然そんな言葉を向けられ、ショックを受けていませんか。

「どうして私を疑うの?」
「何度説明しても信じてもらえない」
「本当に疲れてしまった……」

家族だからこそ、悲しさや悔しさ、どう接すればいいのか分からない戸惑いを感じる方は少なくありません。

私は理学療法士として急性期・回復期・生活期のリハビリに携わり、その後は介護施設の管理者として、多くの認知症の方とご家族を支援してきました。

その中で感じたのは、「財布を盗まれた」という言葉を否定することよりも、その奥にある不安に寄り添うことが、結果として本人の安心につながるケースが多いということです。

この記事では、認知症の親が「財布を盗まれた」と言う理由や、家族が避けたい対応、現場で実践してきた接し方をわかりやすく解説します。

目次

「財布を盗まれた」という言葉の奥には不安が隠れています

認知症の親から「財布を盗まれた」と言われると、家族は事実を説明したくなります。

しかし、多くの場合は「財布を盗まれた」という出来事そのものではなく、「財布が見つからない」「支払いができないかもしれない」という不安が背景にあります。

まずは本人の不安を受け止めることが、安心につながる第一歩です。

本人にとっては本当に財布がなくなっている

認知症では、自分で財布をしまったことを忘れてしまうことがあります。

本人にとっては「財布がない」という事実だけが残るため、「誰かが持っていった」と考えてしまうことがあります。

嘘をついているわけではなく、その時の本人にとっては現実です。

強く否定すると不安が強くなることがある

「盗んでないよ」
「何回言えば分かるの」

と説明したくなる気持ちは自然です。

しかし、認知症の方は説明の内容を忘れても、「怒られた」「否定された」という感情は残ることがあります。

その結果、不安がさらに強くなることがあります。

まずは安心できる言葉をかける

最初に必要なのは事実を証明することではありません。

「財布が見つからなくて心配なんですね」
「一緒に探してみましょう」

と、不安を受け止める言葉をかけることが大切です。

不安の原因を探すことが大切

財布そのものではなく、

・支払いができていないと思っている
・迷惑をかけることを心配している
・財布が見つからず混乱している

など、人によって背景は異なります。

何に困っているのかを考えることが、適切な対応につながります。

なぜ「財布を盗まれた」と言うのか【現場経験】

財布が見つからない不安が「盗まれた」につながる

現場では、自分でバッグや引き出しにしまった財布を見つけられず、「誰かが盗った」と話す方を何度も見てきました。

本人にとっては財布がなくなったことが大きな不安になっています。

支払いへの不安が背景にあることも多い

私はリハビリや介護サービスの現場で、

「料金は払いましたか?」
「今日はお金を持っていなくて申し訳ない」

と何度も確認される方を多く見てきました。

その経験から感じたのは、お金そのものよりも「支払いができていない」という不安を抱えている方が少なくないということです。

その不安が、「財布がない」「盗まれた」という訴えにつながることもあります。

介護保険の仕組みが理解しづらいこともある

介護保険サービスでは、その場で現金を支払わないことがあります。

しかし、認知症によってその仕組みが理解しづらくなると、

「払っていない」
「迷惑をかけてしまう」

という不安につながることがあります。

穏やかな対応で落ち着く場面を何度も見てきた

家族が責めたり説明を繰り返したりするより、

「大丈夫ですよ」
「一緒に確認しましょう」

と穏やかに対応すると、本人が安心して落ち着く場面を何度も見てきました。

もちろんすぐに解決するわけではありません。

それでも、不安を受け止める対応の方が、結果的に落ち着くことが多くありました。

よくある質問

財布を盗まれたと言われたら、すぐに否定しない方がいいですか?

はい。まずは強く否定しないことをおすすめします。

「盗んでいない」と説明したくなるのは自然なことです。

しかし、本人は財布が見つからず、本当に困っている状態かもしれません。

まずは、

「財布がなくて心配なんですね。」
「一緒に探してみましょう。」

と、不安を受け止める言葉をかけることで、安心につながることがあります。

財布が見つかったら、本人に説明した方がいいですか?

財布が見つかったことは伝えて構いません。

ただし、

「ほら、自分でしまったでしょう。」

と責めるような言い方は避けましょう。

「見つかってよかったですね。」
「安心しましたね。」

と、安心できる言葉を添える方が、穏やかに受け止めてもらえることが多くあります。

家族ばかり疑われるのはなぜですか?

認知症の方は、身近な家族を疑ってしまうことがあります。

これは家族が嫌いになったわけではありません。

一番近くにいて、よく関わる相手だからこそ、疑いの対象になってしまうことがあります。

「私を信用していない」と受け止めるよりも、認知症による症状の一つとして理解することが大切です。

毎日同じことを言われてつらいです

何度も同じ訴えを聞くと、家族が疲れてしまうのは当然です。

毎回完璧に対応しようとする必要はありません。

一人で抱え込まず、ケアマネジャーや主治医、地域包括支援センターなどに相談しながら介護を続けることも大切です。

家族自身の心を守ることも、長く介護を続けるためには欠かせません。

受診を考えた方がいい場合はありますか?

こういった症状は「もの盗られ妄想」といいます。

これは認知症の**周辺症状(BPSD)**の一つです。

周辺症状は、その日の体調や睡眠不足、生活リズムの乱れ、不安やストレスなどがきっかけとなって強く現れることがあります。

そのため、次のような場合は、早めに主治医へ相談することをおすすめします。

  • 急にもの盗られ妄想が強くなった
  • 家族への怒りや暴言が増えた
  • 興奮が強くなり、暴力につながりそう
  • 家族だけでは対応が難しくなってきた
  • 介護サービスの利用が難しくなっている

周辺症状は、環境を整えたり、不安の原因を減らしたりすることで落ち着くことも少なくありません。

一方で、症状によっては薬による治療で改善が期待できる場合もあります。

家族だけで抱え込まず、「最近様子が変わってきた」と感じたら、早めに主治医や認知症を診ている医療機関へ相談しましょう。

まとめ

認知症の親から「財布を盗まれた」と言われると、家族は深く傷つきます。

しかし、現場で多くの方と関わってきて感じるのは、その言葉の背景には「財布が見つからない」「支払いができないかもしれない」「迷惑をかけてしまうかもしれない」という不安が隠れていることが多いということです。

だからこそ、最初に大切なのは事実を証明することではありません。

「心配でしたね。」
「一緒に探してみましょう。」

そんな安心できる言葉から始めることで、ご本人の気持ちが落ち着く場面を私は何度も見てきました。

もちろん、毎回うまくいくとは限りません。

家族も悲しくなったり、腹が立ったりすることがあります。

そんなときは、「どうしてこんなことを言うのだろう」と考えるのではなく、「何が不安なのだろう」と少し視点を変えてみてください。

それだけでも、親との関わり方が変わるきっかけになることがあります。

一人で抱え込まず、困ったときは主治医やケアマネジャー、地域包括支援センターなどにも相談しながら、本人も家族も安心できる方法を探していきましょう。

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この記事を書いた人

リハビリ専門職として病院・訪問リハビリ・介護保険分野などで20年以上現場に関わってきました。現在は介護施設の運営支援や現場改善にも携わっています。実際の現場では、介護疲れや家族関係、仕事との両立など、多くの悩みや葛藤を見てきました。このサイトでは、“理想論だけでは続かない介護”を前提に、一人で抱え込みすぎず、少しでもラクに続けるための現実的な情報を、現場経験をもとに発信しています。

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